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少女☆歌劇 レヴュースタァライト 感想

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※本記事はネタバレを含みます。また、他作品の話題をいくつか出しています。

 

以前少しだけ興味を引かれたもののスルー。そして先日合唱の某企画団に参加表明をし、丁度いいタイミングだなと思い観てみました。

テレビアニメシリーズを観るのはとても久しぶりだったのであまり上手い向き合い方はできなかったのですが、とても楽しませていただきました。少しファジーな画面造りに引っかかることが度々あり、しかしながらそういう面をひっくるめてテレビアニメらしく、どこか懐かしい気持ちになっていた気がします。昔は1クールに10本近く観ることはザラでしたので......

 

 

わたしにとっては、きらきら光る星(もの)のようなのです。

(光るもの、と断言しない。まだまだその本質を理解できない、発展途上の女の子なので。そして途上のまま終わる)    ──アヴァロン・ル・フェ シノプシス 初期案より

 

最近読んだからというのが大きいですが、僕はこの話がパッと頭に浮かびました。きのこ脳め......

彼女たちが目指した「トップスタァ」。それは形のない概念で。日々進化中であるか、完成されているように見えるかにかかわらず、それを完璧に理解するなんてのはありえない話です。舞台に限らず芸術の世界においては、完成形を得られたという体感があったとしても「その先」がいつまでもあるもので。繰り返しになってしまいますが、頂点はいつでも目に見えているようで、本当の意味で理解することは不可能......個人的にはむしろ、それを理解できるなんてことがあってはならないと思っています。

高みを目指す少女たちの輝き。塗り替えられた物語の結末。本作は僕に思いっきり刺さりました。華恋がひかりと共に導いたあの結末は、この上なく美しい形で提示された「その先」の可能性のひとつなのでしょう。

 

舞台芸術を主題に置いた作品は『ハッピーライヴ ショウアップ!』が個人的に殿堂入りでして。触れる機会がめっきり減った映像媒体という点もあり楽しめるかどうか不安だったりしました。完全に杞憂だったのですけれどね。

あちらが「少女が舞台に立つまでの成長」を描いていたのに対し、本作は「舞台で生きている少女の進化」が軸になっていたと思います。語られた結論だけでなく、軸からして違っていたので新鮮な気持ちで触れることができました。

 

群像劇チックな進行をしていたということで、各キャラクターに対して感じたことをまとめておきます。

 

・星見純那

全体構成の都合に殺されてしまったなと感じたキャラクターでした。

公式サイトのテキストを読んで初めて「華恋の姿を見て凝り固まった思考から解放されたんだ」と了解できたのですが、本編だけでは渇望のレヴュー後にどうしてあそこまですっきりとした様子だったのかよくわからず......しかも、作中で描かれていた彼女の苦悩を「私には届かない」としか僕は受け取れず、それが凝り固まった思考であるかと言われると......?

ひたすらに憧れを追いかける少女としてはストレートに描かれていたものの、やはり敗北の後の様子がどうしても僕には咀嚼できませんでした。あの場で全てを出し切るというのは当たり前(それらしい特別な描写もなし)。「負けても終わりじゃない」と気がついたことで肩の力が抜けたのなら、気づくきっかけは「華恋との再戦が実現した」しかなかったように思えるので、そう解釈してしまうと彼女の意志の強さを否定することになってしまいます。

キャラ造形はとても好みでしたが、持っているドラマは本編であまり上手く描けておらず、どこかちぐはぐな印象となりました。

一番好きなのは、ばななに格言を投げ続けるシーン。強く印象に残っていますね。最後に自分自身の言葉を贈るという王道な流れが心地よかったです。

 

・露崎まひる

本作にググッと引き込まれるきっかけとなったのは5話、まひるの回でした。

華恋が自分から離れていくと焦る様子は序盤から描かれていて、5話ではとうとうおかしな行動に走ってしまい。そして嫉妬のレヴューでは「自分には何もない」と思い込んでいることが明らかになり。それは怖くなって当然だよな......とめちゃくちゃ感情移入してしまいました。

レヴューではコミカルに描かれているカットが多い点が印象的でした。当初僕は「コミカルに描かれていなければ間違いなく彼女の想いは受け止められなかった」と考えていて。しかし今思えば、想いの強さからあえて乖離するように見せることで、彼女の不安定さが引き立てられていたなと。最初にパワー系のスタイルを見せてインパクトを残していたり、「ほら小さな光なんて 真昼になれば消えてしまう」という歌詞であったり。上手く言葉にできないのですが、様々なところで「目で見る印象とは逆のニュアンスを乗せる」といったエッセンスが散りばめられているなと思います。

華恋がいなければからっぽになってしまうという恐怖に対して、華恋から「ちゃんとキラめいているよ」というメッセージが届けられるのがシンプルながらもとても素敵で。その後に過去の自分を見て「私もちゃんとキラめいている」と改めて認識する流れは完璧でした。自分自身の姿から、というのがポイントですよね。

 

・石動双葉

憧れの存在(香子)を追いかけるという、序盤の印象と違ってたポジションであったのがとても良かったです。クロディーヌと共にどんどん高みへと登っていく双葉に対し、停滞しているような様子でいる香子。「子供らしいわがまま」の域を超えた言動を見せ始めた香子に「力不足だ」と告げるのにどれほどの覚悟が必要だったのか......

憧れていた存在が持つマイナス面。それを目にして身近に感じられて嬉しくなる人もいるかとは思いますが、ものすごく心を削ってくるものなんですよね。とうとう我慢できずに一度突き放しながらも、そこで折れることはなく。その後に発破をかけるような行動をとることができる芯の強さには痺れました。

『花咲か唄』の歌詞は個人的に殿堂入りです。お互いに突き放すような歌詞の直後に「咲き誇るその瞬間だけ 一番に見たくて」「思い出を忘れられぬように こころ抉って行きます」と心の底では相手を想っていることを感じさせるフレーズが配置されているのはお見事としか言いようがありません。心に突き刺さりました。

 

・花柳香子

持っているドラマだけでなく、ビジュアルや声などもひっくるめると一番好きなキャラクターは間違いなく香子でした。

子供らしさは1話から見せていて、6話ではとうとう爆発。双葉と一度決別した後に、1人でも頑張ろうとしている姿を少し見せていたのが印象的でした。前の回で「誰かに頼らずに」とまひるが踏み出す描写をしていたのにもかかわらず、香子が結局「どうして追いかけてくれないの」とこぼしてしまうのはかなり容赦のない構成だなと。

約束のレヴューで存分に想いをぶつけあった後の着地点が「追ってくる者のため」ではなく、「2人で一緒に」だったのがとても好きです。『花咲か唄』の歌詞では双葉のことを雛鳥のように思っていたことが示唆されていますが、もう自分たちは対等であると認めて(彼女は自分が下だとは絶対に考えないはず。現実がどうであれ、良い意味で子供らしさは残ったままなのだと思います)、共に歩むことを選ぶところに惹かれました。

 

・大場なな

物語に一番の刺激を与えるポジションだったと思います。7話の設定開示には驚きました......

おそらくは初めての舞台だったであろう第99回聖翔祭。彼女にとって、本当に本当に特別だったのでしょう。僕は未だに初めての本番のことを覚えていますし、あの瞬間を永遠に自分のものとしていたい気持ちが痛いほどわかってしまったんです。彼女は願いを叶えられるだけの強さ、キラめきを持っていて。それがひとつの場所に囚われてしまうのは本当に心が痛かったです。停滞していて、それがとても空しいことのように描かれていたのも刺さりました。

『星々の絆』の前半パート、力強い歌声と悲劇的なサウンドで演出される迫力が本当に良いですよね。初手で思いっきりぶつけるように音を鳴らしてからの「決して誰にも邪魔はさせない」は胸が締め付けられる......

彼女が繰り返してきた運命の舞台は完全な停滞ではなかったと最後に明らかになるのも大好きで。少しずつであるけれど歩みを止めてはいなかったという姿勢がとても素敵。後述する神楽ひかりも同じような点があると解釈しているのですが、表面的に捉えれば過ちとされる行動を完全なマイナスとせず、作中ではキラめきのひとつとされているのではないかなと思います。

 

・西條クロディーヌ

純那と同じように、若干ではありますが全体構成の都合に殺されてしまっていたかなと思います。子役時代のエピソードとか、聖翔学園入学前後での自意識の違いなんかがしっかり描かれていると良かったんですがね......天堂真矢という大きな存在に初めてぶつかった瞬間はあまりサラリと流してほしくなかったといいますか。

挫折があまりはっきりと描かれていなかった点はとても彼女らしいと言えるかもしれません(入学試験のエピソードは挫折ではないでしょう)。壁にぶつかる描写をなるべく少なくしているにもかかわらず「頂点には届かず、それでも走り続ける2番手の少女」という印象はずっと頭にあったんですよね。主に真矢となりますが、本人の描写ではなくまわりのキャラクターを印象づけることによって自然と人物像が了解できる形になっているのは面白いなと思いました。

運命のレヴューで真矢に選ばれた時の彼女は、表面上の反応はともかく、特に心が動いたわけではなかったと思います。喜びや緊張はなく、いつも通りただひたすらに高みを目指すだけ、といった姿勢でいたんじゃないかなと。ひたむきな姿勢でい続けたからこそ自分自身を、そして真矢をよく理解しており「負けたのは私だけだ」というセリフを躊躇なく投げることができる。なんて強い人間なんだと思いました。

 

・天堂真矢

実を言うと、全く咀嚼できていないと感じているキャラクターです。本当に難しい......

『誇りと驕り』。「驕り」というのは覚悟に見合ったキラめきを持っていない華恋を指す言葉のはずなんですが、これは真矢にもかかっている言葉だなと思いまして。「私は一人でもスタァだ」というセリフがずっと引っかかっていたんです。

孤高であるように感じられるけれど、その実他者を認めているというか、きちんと見ていることは早くから示唆されていました。それに加えて先に挙げたセリフがあったので、私だけでという考えからどう脱却するのか、あるいは貫くのかということを期待してしまって。後半になってもこのあたりにあまり深く触れられなかったので、誇りのレヴューとそれ以外の天堂真矢がどうしても僕の中で上手く繋がってくれないんです。華恋の前に立つ壁として、シナリオの都合に動かされていたような気さえしていて。有識者のプレゼンを聞きたいですね......()

 

・神楽ひかり

華恋だけではなく、舞台のキラめきそのものを愛しているキャラクターだったと思います。王立演劇学園でのオーディションで敗北した後の苦悩や、華恋から煌めきを奪いたくないという感情を抱いていたあたりが大好きです。

ひかりまわりの描写でまず触れたいのはクラゲについて。4話では様々な水族館を巡り「どうすればいいかわからない」と華恋にメッセージを送るシーンがありました。水族館だけではなく色々な場所が描かれていましたが、クラゲがトレードマークとして機能していたのではないかなと。クラゲは泳ぐ能力が極端に低いということもあり、メッセージ以外にもこの方面から「今のひかりは特に目的を持たず、ただ流されるがままになっている」と表現されていたと思います。そんなマイナスイメージがつくクラゲのぬいぐるみを大事な物として購入していたことがとても印象的だったんです。迷走してしまったことからは目を逸らさず、自分の経験として糧にするような、そんな真面目さ、ひたむきさを持っているんだなと思いました。その芯の強さは8話で存分に描かれていて。一番好きな回をひとつ挙げろと言われたら僕は8話を選びますね。

しっかりと尺を使って描かれていたのが大きいとは思いますが、持っているドラマが一番好きなのはひかりでした。『RE:CREATE』のオルゴールパートからの流れが本当に大好きで。とても心を揺さぶられました。

 

・愛城華恋

大きな成長を見せる主人公で、とても王道なキャラクターとして描かれていました。壁にぶつかったことによる最初の挫折と再起を序盤のうちに消化しきっていたので、舞台少女の前向きさは早い段階で了解できました。それだけに11話での苦悩、容赦なく時間が過ぎていく描写はつらかった......

ひかりと共に物語の結末を塗り替えるという着地点は、先に述べた通りとても美しいと感じました。スタァライトは悲劇だと度々言及されていましたから。あれだけアピールされていれば最後は塗り替えてハッピーエンドにするだろうと予想がつくものですが、それでもしっかりと心を打たれました。物語の枠を超えることが、舞台......ひいては芸術の持つ無限の可能性を提示してくれたと思っています。

2人ならばなんでも成し遂げることができる、と提示されたわけですが。続きのおはなしでは1人でもキラめくことができると語るのか、2人での道を貫いていくのか、どちらの方向性で描かれるのかとても楽しみです。

 

こうやって感想を書くかはわかりませんが、舞台版や総集編劇場版、そして続編となる劇場版にも触れていくつもりです。完全に沼ってしまいました......