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『ジュエリー・ハーツ・アカデミア』楽曲感想会&ピアノメドレーのおはなし

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買ってください。以上です。

(埋め込みが上手く表示されないことがあるみたいですがすぐ下のリンクはちゃんと生きているようです)

 

……これだとあんまりにもあんまりですね。すみません。

ただジュエハプレイ済でサントラ未購入の方はなるべく早く買ってください本当にお願いします絶対後悔しません。

というわけで。予定よりも遅くなってしまいましたが今回はジュエハの楽曲に触れて感じたことや、ピアノに落とし込むにあたって何を意識したか等を語っていこうと思います。

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個々の楽曲に触れていく前にピアノメドレー全体のおはなしをさせてください。原曲の話を見に来たんだよ~という方もいると思います。申し訳ございません。

ピアノメドレーを作るのは3回目(リメイクも含めると4回目)。今回は自分が持っているものを全て出し切ろうという覚悟を持っていました。これにはいくつか事情がありまして、

・これまでのメドレーは制作中の疲労により妥協した部分があった

・冬茜トム氏曰くジュエハは「ホップステップジャンプのジャンプにあたる作品」

・楽曲数がさくレットから増えている上、どれもよりパワーアップしていると感じた

このあたりが理由でとにかく全力をぶつけたいと思ったわけです。ピアノメドレーに限らず、合唱アレンジの伴奏でも人間が弾くのは不可能っぽい箇所をミスでうっかり作ってしまうことがあるのですが、今回のメドレーにおけるそのような箇所は全て意図的なものです。楽譜の見た目よりもとにかく聴き映えを重視しています。また、楽曲を前半でカットするようなこともしないよう心掛けました。

ツイッターで仲良くしてくださっている方はご存じかと思いますが、今回は疲労対策のために体験版の頃から作業を始めてました。制作のスパンを長めに取れば自分でも妥協せずにやりきれるんじゃないかと思いまして。結果的には今までのメドレー制作と変わらず、ともすれば遥かに高い密度で作業していた気がしますが……

 

今回のメドレーはあまりはっきりとした区切りがないようにしたつもりですが、大きくわけるとするのであれば3つの展開で構成されていると言えるんじゃないかなと。それぞれのイメージとしては、

学園編:『君とのミチシルベ』~『Ruined Empire

→楽しい学園生活とその崩壊

バトル編:『Will of Adamant』~『Fate Crystally』

→戦闘の緊張感、キャラクター達のカッコよさ

真実編:『Origin Races』~『ヘリオドールの光跡』

→世界の深部、決戦とその後

こんな感じです。

 

 

ここからはそれぞれの楽曲に感じたことなどをつらつらと書いていきます。メドレーに取り入れることができなかった楽曲については後日ツイッターあたりで発信する......はずです。

ジュエハ本編の激しいネタバレを含むのでご注意のほどをよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

『君とのミチシルベ』
ゲームサイズについては過去記事で語っています。よろしければそちらをどうぞ。

gyogyomarumaru-gmmsc.hatenablog.comタイトルBGMに使用されたということで、ジュエハ世界への入り口として最初に配置しました。off vocal ver.としているのは実際のゲーム画面を意識したから……というのもありますが、最終盤の隠し玉の印象を強くしたかったという事情が大きいです。原曲のoff vocal ver.ではサビでメロディーが鳴っていますが、ここもバッサリとメロディーを切ったのは完全に最終盤意識でした。

 

『Balmy Country』
とても牧歌的で、○ケモンで言うなら1番目か2番目ののどかな町のような印象を受けました。前半に出てくる16分音符のピコピコした音がどこかRPGといいますか、ゲームらしく感じるんですよね。
聴きどころはさりげなく入ってくる煌びやかな音だと思います。2つ目の展開(サントラ音源で言うと0:21あたりから)の鐘の音や、3つ目の展開への切り替わりのシャラーンと鳴る音(0:50くらい)のことですね。凄く絶妙なバランスで鳴っていて、ここを意識して聴くと「いつも宝石が側にある日常」といった雰囲気を感じ取れるんじゃないかなと思います。ピアノではこのあたりの要素を上手に組み込むことができなかったのが少々心残り(楽器の特性上ほぼ不可能だとは思うのですが)。
メドレーには原曲よりも少しだけテンション高めで取り入れました。イメージとしては5番目くらいの街。原曲のイメージ通りに譜面を作ったところ『君とのミチシルベ』との温度差がかなり大きくなってしまい、いきなりダレてしまうのはマズいなと感じたので原曲のピコピコ音に近い動きを左手に使用しています。

 

『Solemn Academia』
リズミカルな3拍子系楽曲は大好物です。本当にありがとうございます……(?)
タイトルにある通り少々厳粛な雰囲気を漂わせるような楽器編成がされていますが、メロディーの動きと若干主張強めのティンパニが上手い具合に親しみやすさを引き出していると思います。
低音を鳴らす楽器が入ってきてから(サントラ音源で言うと0:39~)は一気に「現実の演奏」感が出てきているんじゃないかと。音楽部の上級生がパビリオンで演奏している様子を僕は幻視しました。マークスも混じれるくらい上達できてるといいなと思います()
ピアノに落とし込む際には前半と後半の「重さ」の違いを特に意識していました。特に左手の動きにそれが表れているんじゃないかと。実はこの楽曲、メドレーで一番最初に制作した譜面がベースになっているので少しだけ雰囲気が変わって聞こえているかもしれません。実際のところどうでしょうか……?

 

『School Lyric』
楽しげな雰囲気ってこうやって演出するのか……と大変勉強になりました。かなり多くの要素が散りばめられていて、僕が気づいた点を箇条書きで列挙していきます。
・スウィングがかかっている
・バックの音が裏拍を突いてくることが多い
・装飾音符(ツールだと上手く鳴ってくれなかったのでメドレーの譜面では使用していません)
・ピアノのトレモロ
・ピアノのグリッサンド
以上の要素は全て楽しげな雰囲気を作るのに重要な役割を担っていると感じました。可能な限りピアノカバーに詰め込んだつもりです。そのおかげで現実での演奏が不可能な譜面となりましたが……先にも述べた通り今回は耳に入る情報を優先したかったのでしょうがないですね()

 

『Juwelry Everyday』
ピアノが縁の下の力持ち的な役割を果たしています。印象に強く残っている人が多いのではないでしょうか。
個人的注目ポイントはドラムの刻み方とベースの跳ね具合。中々クセになる動きをしているのでぜひ意識して聴いてみてほしいです。
ピアノカバーとしては左手の動きにかなりこだわりを入れました。原曲のドラムの刻み方を意識しつつ、ピアノソロであればどのような形にすれば聴きやすくなるのか苦労した記憶があります。

 

『Missing Myth』
さくレットの『ゑだわたり』と似た方向性のミステリアスな雰囲気を持っていて、かつあちらよりやや不穏さを押し出した楽曲だなと感じました。スティックをカッカッと弾く音がどことなくホラーっぽいんですよね。
場面の切り替わりにさりげなく入ってくるハープのような音がお気に入りです。こちらもホラーっぽさを引き出す効果があるかな……?と思います。
全体を通して根音の動きがかなり小さいことにはピアノに落とし込む作業を始めてから気付きました。色気っぽい何か(決して色気ではない)がにじみ出ているのはこれが理由かもしれません。

おそらくは特殊音階の楽曲なので、メドレー中の譜面がきちんとした表記にできているかはわかりません。このあたりの知識はそろそろ増やしていった方がいいかもしれませんね......

メドレー中では、ほんの少しだけ不穏さを匂わせる立ち位置としています。このあたりには『Nightmare Core』を使用する案もあったのですが、『Lost Hope』による突然の崩壊を表現したかったのでこちらをメドレーに取り入れることになりました。

 

『Lost Hope』
ひたすらに圧倒されるばかりでした……初めて聞いた時はシナリオの展開に驚かされて楽曲にあまり意識を向けられなくて、後でしっかり聴いてみたら込められているパワーが凄すぎて変な笑いが出てきた記憶が。
以前とある作曲家の方が「戦闘曲といえば5拍子」とおっしゃっているのを見たことがあり、当時はいまいちピンときていなかったのですが、この楽曲で凄く腑に落ちました。命を削りあうかのような緊張感の演出としてぴったりな拍子なんだなと考えるようになりましたね。あとはイントロのフレーズがループ前で再登場してくるところなんかはリアルに鳥肌が立ちました。
メドレーの中では2番目に作業をした楽曲です。あまりにも強い衝撃を受けて「これは今すぐ作らなきゃ」と奮起していたような……結果的に最も力を入れた楽曲のひとつになりました。
本編を読んだ後だとキルスティンの印象も強くなっていると思いますが、完全にギメルのテーマとして作りました。体験版の時点で彼が騎士然としていて誇り高いキャラクターであることは感じ取れた(シャーロット先生に敬意を払っていたり、きちんとした型で剣を振ったり)ので、苛烈さ:優雅さ=7:3を目指してピアノ独自のカッコよさを僕なりに追求し尽くしました。

原曲に倣うだけだとただの劣化にしかならず、泥を塗ることになってしまいかねないと必死で。あの時の僕はこの楽曲と文字通り戦いをしていたんだと思います。初めての経験でした。
きちんと原曲に見合うクオリティにできたと判断してホッとした瞬間は今も覚えていますね。ただ、2曲目の作業でこれを仕上げてしまったのでこれ以降やっていけるのかという不安もありまして。「これまでのメドレーより力を入れよう」とは元々思っていたわけですが、この楽曲の作業をきっかけに、想定よりもギアを2段階上げて他の楽曲も作ろうと決意しました。もちろん最初に作った『Solemn Academia』も後に手を入れた上でメドレーに組み込んでいますよ(大枠は変わっていませんが)。

 

『A Monochrome』

シナリオの重さ抜きにしても、とにかく容赦のない楽曲です。イントロは凄く儚くて、言うなれば同情を誘うような印象。そこから一気に悲しみをそのまま叩きつけるような重たい音作りがされていて、聴き手を観測者から悲劇の当事者に変えてしまうようなパワーがあると思いました。

ゲームプレイ中に聞いている時は比較的簡単にピアノに落とし込める楽曲だと考えていましたが、きちんと楽曲を聴いてすぐに「これは難しい。ピアノだけでこの重さを表現できるのか」と頭を抱えました。実際めちゃくちゃ苦労しましたね......

散々迷走しながらもなんとか作り上げましたが、冬茜トム氏がFANBOX記事で「今作にループはない」と言及されていたのを見てなんと1から作り直すことに。シャーロット先生に捧げる楽曲にしたかったんです。大枠は最初に作った形とほぼ変わりませんでしたが、第七音を積極的に積み込む形になりました。

 

『Luined Empire

ジュエハ楽曲の中で一番西洋ファンタジーど真ん中な雰囲気だと感じました。特にお気に入りな楽曲のひとつですね。

どんなスケール感にもマッチする緊張感を持っているのが凄いと思います。例えば西部劇のように戦いの前の語り合いであったり、戦争が近くて国の雰囲気がピリついている様子であったり。このような器の大きい楽曲はノベルゲームならではじゃないでしょうか。

最初からずっと緊張感を維持していて、後半(サントラで言うと1:49~)は雰囲気が更に重くなる中で軽めのドラムが出てくるのがポイント。ただ威圧的なだけではなく、主人公サイドが戦意を強めるような印象を受けるのはこれが理由じゃないかなと思います。

ピアノカバーとしては可能な限り原曲再現をする方向でいきました。ギメルの戦線布告をイメージ(絶望感強め)しているので最後までひたすらに重い方向性にしています。

 

『Will of Adamant』

ゲームサイズについては過去記事で語っています。よろしければそちらをどうぞ。

gyogyomarumaru-gmmsc.hatenablog.com

メドレー中、特に間奏ではそれなりに暴れていますが節度は守ったつもりです......

間奏の中で原曲とかなり違った形になっている部分が2か所あります。1つ目(632小節)は今見ると暴れすぎな気がしなくもない......間奏へ一気に駆け出したかったのでこのような形に。2つ目(647小節)ではその先のメロディーの上で鳴っている音に注目を引きつけたかったので、その前準備としてかなり高いところまで駆け上ってもらいました。

 

『Into Menace!』

戦闘曲の中で一番ピリピリとした緊張感を持っていて、かつ後半(サントラ音源で言うと1:16)は気持ちよく聞かせてくれるという2面性が特徴的だと思います。後半で気持ちよくなった後ループしたか?と思わせた所で更に緊張感のあるフレーズを持ってくるのがが技アリですね。これによって戦闘中というシチュエーションを聴き手が忘れるようなことがない塩梅になっているのではないでしょうか。

イントロで同じフレーズが繰り返されている中で、ギアを入れていくようにドラムの刻む回数が徐々に増えていくのが大好きです。ピアノに落とし込む際、この部分の左手はテンポ感を損なわないようにしながら原曲と同じ印象を演出できるよう頑張りました。納得のいく形がなかなか見えてこなくて苦労した記憶が......

後半の左手は普段よりも高めの音域を使うようにしました。前半と後半のテンションの違いをわかりやすくして、ちゃんと気持ちよくなれるような構成にできたんじゃないかなと思います。

 

『Sword Wind』

この楽曲については語彙力を失くしてしまうんですよね......主人公サイドのターンだ!というのが僕の印象に近い表現ですかね......?

パッと聴きでは『Scarlet Frontline』の系譜なのかなと思っていたのですが、戦闘曲である分こちらは疾走感を終始保ち続けているのが特徴(あちらはイントロ以外ずっしりしている印象です)。どのような要素によってこういった違いが出てくるのかは分析しきれませんでしたが......

初期段階のメドレー音源は、左手が原曲のドラムとほとんど同じ刻み方をしていました。これだと流石に重たくなりすぎていたので16分音符で刻む形に変更しましたが......楽器の特性を考慮するってこういうことなんだなと学びました。ちなみに、疾走感を出すためにヴェオのテーマだということをほんのりとイメージしていました。あくまでほんのりと、なので『Lost Hope』ほどガッチガチにイメージを固めていたわけではありません。

 

Fate Crystally』

ゲーム中ではプレイヤーにとって初めての「キラキラした要素が入った戦闘曲」になったと思います。一般戦闘曲の中でこの楽曲が少しだけ特別であるように感じられるのは、キラキラしたイントロの印象によるものなんじゃないかなと個人的には考えていたり。

前半(サントラ音源でいうと1:22頃まで)はメロディーがかなり低めの音域を動いていることが多いと感じました(メドレーの楽譜を見てもらえればわかりやすいかと)。原曲は前半とサビ(サントラ音源で言うと1:43から)では音圧がそこまで大きく変化しているわけではないのですが、メロディーの音域によって前半を「溜め」のパートに、サビをサビたらしめているんだなと思います。

ピアノに落とし込む際は前半でめちゃくちゃ苦労しました。キラキラした音は絶対に捨てるわけにはいかないと決めるとどうしてもメロディーが埋もれてしまいがちで......できる限りは工夫したのですが、最終的なメドレー音源でも前半は少々聴きづらい形になってしまったかもしれません。

1度目の転調でスイッチが入るような構成にしたのは僕の性癖みたいなものだと思います。原曲のあの転調の仕方が大好きなんですよね......

 

『Origin Races』

製品版発売前では、まさかこのような雰囲気の楽曲が出てくるとは思いませんでした。

どことも知れない、けれども確実に近い場所で何かの力が蠢いているような印象で、凄く不安を煽られる楽曲だと思います。

躍動感の秘訣は拍子の取り方。メドレーの譜面では(3+3+2)/8という表記にしました。同じような拍の取り方は『Rebellion Tears』にも出てきています。一口に躍動感といってもこの2曲でニュアンスが全然違うのが音楽の面白さですね。

「調とテンポを変えない」という制限の中で最も大胆なアレンジをしたのは間違いなくこの楽曲。アリアンナがエフェメラルエメラルドに飲み込まれるシーンの前後をモチーフにしています。

それぞれの展開で簡単に解説を。

①(895小節~)

→ppでスタート。徐々に迫りくるようにクレッシェンドし、アストゥリオスがアリアンナに影響を与えていく様子を表現。右手は可能な限りぶつけるように音を積んでいき、ギリギリ許せる範囲で不快な和音を鳴らす。

②(907小節~)

→メロディーが入ってくるパート。①と同じく、積極的に音をぶつける。アストゥリオスが持っていた力の強大さを表現するために、メロディーはオクターブ下も鳴らす。

③(915小節~)

→(一応は)休憩パート。右手は原曲とほぼ変わらない形のはず。

④(923小節~)

→②とほぼ同様。③からの流れに合わせて右手をオクターブ上に変更。

⑤(933小節~)

初めはメロディー単音。1フレーズ毎に音を1つだけ積み、迫力を上げるとともに不快さをどんどん増やしていく。最終的には原曲のメロディーを埋もれさせて、不快さは許せる範囲を飛び越える。締めは音をひとつだけ余韻として残し、アリアンナが飲み込まれて取り返しのつかない状態になってしまったと示唆するような形に。

 

見ての通り、とにかく不快さを意識しています。ありえないような音の積み方をしていますがそこはまあ現代音楽ということにしておいてください()

 

『Will of Adamant ~追想~』

ジュエハキャラバンでKyoKaさんに「そう来る!?ってなりますよ」と言われていて、いざ初めて聴いた時「そう来る!?」と反応をしてしまいました......驚いた......

映画の劇伴のように迫力のあるサウンド。元よりもさらに悲劇的な歌詞。KyoKaさんのパワーたっぷりな歌声。どれも素晴らしい。

まさかKyoKaさんがこんな歌声でも戦えるなんて......喪服を想起させるような、黒いドレスを着て歌っている姿が僕には見えました。鬼気迫るような歌声と、今にも消えてしまいそうな儚い姿のコントラストで感情を揺さぶられて自然と涙が出てくるような。そんなイメージです。

これまでに僕が触れてきた藤井稿太郎さんのボーカル曲の中で間違いなく一番好きになりました。本当にありがとうございます……

メドレーにはoff vocalで取り入れました。『君とのミチシルベ』に合わせたというわけではなく、気が遠くなるような印象を持ってもらいたかったからです。また、ボーカル曲をピアノに落とし込むとどうしても表現の幅が狭くなってしまうことも気になりまして......ピアノ1台の楽譜の限界を感じました。連弾の譜面か、楽譜は見せずに無制限で作った音源なんかにいつか挑戦してみたいですね。

基本的には原曲再現という形で、挿入歌として使われた黒アリアンナのシーンの他にソーマとペガサス組の激突とその後のルビイとの決戦、凶弾に倒れるノア、マークスとヴェオの対立といったシナリオ中盤~終盤の悲劇を象徴する楽曲として想いを込めました。締めは原曲と少し違う形で、次の楽曲への繋ぎを意識しています。ここを原曲通りにしたらそのままバッドエンドに行きそうな形になってしまいまして......この楽曲のパワーを改めて思い知り、ほんの少しだけ雰囲気を緩めさせていただきました。

 

『Prism Overload』

決戦楽曲その1。疾走感のある他の戦闘曲に対して、こちらは地に足をつけているような、しっかりとした土台がある楽曲だと感じました。ソーマとアリアンナの2人でギメルに思想を伝えるというあのシチュエーションにぴったりだと思います。

終盤(サントラ音源で言うと1:56)で『君とのミチシルベ』のフレーズが入ってくるのはあまりにもズルいと思います。こんなの胸が熱くなるに決まっているじゃないですか......少年漫画的と言いますか、そのようなアプローチが出てきたことには驚きました。そういうオーダーが入っていたんでしょうか?

ピアノへ落とし込むにあたって、先に述べた「地に足を付けた」感覚を大事にしました。メドレー全体を見たときに「溜め」の楽曲とならないバランスを見極めるのが大変だった記憶があります。また、『Will of Adamant ~追想~』の次にくる楽曲ということで、対比させるように開幕はとにかく綺麗に聴こえるよう心掛けました。絶望的な状況の中。細く、しかしたしかに輝く希望を見出して、確実に前へ歩いていくといったイメージをしています。

 

『Everlasting Shine』

決戦楽曲その2。タイトル通り、まさにどんな状況にあっても輝き続ける揺るぎない意志を描いた楽曲だと思います。『Sword Wind』で語彙力を失っていた僕ですが、この楽曲では更に語彙力がなくなりますね......誇張抜きで全てが良いんですよ。シナリオの補正も相まってとてつもないパワーに仕上がっているんですよね。どこに注目して~だなんて言っている場合ではなくて。楽曲に込められた熱量にひたすら夢中になるといった向き合い方をしていました。

ジュエハ本編を読み終わってから一番最初に作業をしたのはこの楽曲。もちろんギメルのテーマとして組んでいきました。苛烈さ:優雅さ=7:3を目指した『Lost Hope』に対して、こちらは全く逆の3:7を目指しています。

前半はかなり具体的なイメージを持っていたのでまとめておきます。

・1092小節~1099小節

Episode χの時系列におけるギメルが「セシリアの意志を継ぐ」と覚悟する様子を表現したパートと解釈。その上でほぼ原曲通りとしました。1098小節のメロディーをほんの少しだけ変えているのは、別れの悲劇性を印象付ける意図があってのものです。

・1100小節~1107小節

時系列は現在に。あの日の空の輝きとセシリアの言葉を改めて反芻するギメルの様子をイメージして、過剰なぐらいきれいになるように意識しました。

・1108小節~1115小節

ここで最終決戦開始。原曲でギターが鳴っているところを強拍としつつ、なるべく勢いは削がないように左手の動きを組みました。あまり表現できていない気もしますが、黄金の剣と、それから放たれる光の奔流をイメージしています。

・1116小節~

戦闘としての勢いはそのままに、ペガサス組の面々へ実直に向き合う(相手をフルネームで呼ぶ)ギメルの気高さを損なわないように原曲から音を拾っていきました。

後半では生まれて初めてfffの強弱を使いました。普段であれば使うことを視野にも入れていない(せいぜいがpiù ff)ぐらいでしたが、ギメルの人物像に見合った楽曲にするためにはこれぐらいのパワーが必要不可欠だったかなと思っています。

 

『Rebellion Tears』

決戦楽曲その3。ゲームプレイ中流れるたびに興奮していた楽曲です。凄く馴染み深い印象を持っているプレイヤーがほとんどではないでしょうか。

前半(サントラ音源でいうと0:33から)で入ってくるオルガンのような音がお気に入り。ここを意識すると一気に楽曲へ酔うことができるなあと思っています。

イントロとサビ(サントラ音源で言うと1:24から)では主にドラム方面がガラリと変わっていて、メロディー以外ではバックのトランぺットのような音が共通しているかと(間違っていたらごめんなさい)。このトランペットのような音がまた大好きなんですよね。サビ中のバックの音であるという都合上、ピアノカバーには取り入れようがなかったのが本当に悔しいです。

メドレー中ではギメルのターンが終わり、ペガサス組+ルビイの逆転劇が始まる......!といった位置づけにしています。この立ち位置の楽曲は『Fate Crystally』とどちらにするか少し迷いました。曲調に注目して、あちらはヴェオが一人でギメルと決着をつけるシーンに使用されているという理由もあり、皆のテーマとしてはこちらが相応しいと判断した記憶があります。

この楽曲は『Lost Hope』の次、3番目に作業をしました。クールな原曲に対して圧が強めになっているのは、アリアンナの芯の強さの他に、『Lost Hope』の対になるよう意識しているからです。「アリアンナが自由にのびのびと空を飛ぶ」イメージで作業を始めたところイマイチ迫力が足りず、「ペガサスって空を飛ぶんじゃなくて駆けるんだ」とひらめいて先の2点を意識した結果、満足のいく形になりました。

サビ前、1230小節の高音は意志が輝く効果音です。好きなキャラクターの「輝け、○の意志」を1229小節あたりで脳内再生すると気持ちよくなれるギミックとして組み込んだつもりなので、メドレーを聞いてくださる方はぜひ試してみてほしいなと思います。

 

『Emerald Letter』

とても儚く、それでいて心には確かな重みを残していく不思議な楽曲です。メロディがとてもドラマティックで、歌詞を付ければそのままボーカル曲になりそうな点が素敵だと思います。

中盤(サントラ音源で言うと0:51から)で入ってくる、いわゆる副旋律が悲痛な雰囲気を凄く引き立てていて、凄く胸が苦しくなります。『Will of Adamant』と似たような方向性でダメージを受けるんですよね。これはなんとなくの妄想なんですが、藤井さんがデビューされる前に書かれた楽曲を表に出すにあたってリメイクしたかのような、作曲者本人の生の感情がそのまま乗っているように感じられるんです。なんというかこう、ここまでリアルの人間っぽさを感じさせるぐらいに我を入れ込んでいるのが良い意味でプロらしくないといいますか。いやまあ藤井さんと会ったこともないただの1ファンが何を言っているんだという話なんですが……色々言葉を捏ねてしまいましたが大好きな楽曲です。

メドレーにおいては偽ED近辺の「ペガサス組の面々の一生を見守ると決意したソーマ」の一生を語るパートとして取り入れました。エメラルドを発現するぐらい強固な「アリアンナのことを忘れたくない」という願い。そして「クラスメイト皆の最期を看取り、忘れない」という悲痛な覚悟。それらにピッタリな楽曲だと思っています。

サビ(サントラ音源で言うと1:16から)ではソーマの決意に見合うよう、硬い雰囲気を漂わせるように音を積んでいます。メロディの動きは悲しく、1音1音はそれぞれ硬く。あの場面のソーマを語るにはこれしかないと即決していましたね。

 

『Rising Fomalhaut』

決戦楽曲その4。

uniyさんの歌声めちゃくちゃカッコいい……!Twitterとのギャップが凄い……!というのがこの楽器の第一印象でした。初めてあの場面を読んでいた時は展開に全然ついていけてなかったのですが、振り返ってみるととっても胸が熱くなるような、カタルシスのあるシーンになっていたと思います。

強拍を2,4拍目に置いているドラムはまるで鼓動のように聴こえきて、メロディの頭やコードの切り替えが、拍頭ではなく半拍先取りする箇所が多いのがポイント。作中では「生命の軛を超えた」と表現されたアリアンナ。ただ、先に述べた2点からこの楽曲は凄く生命力に溢れているなと思いますね。

挿入歌ということで、メドレー中ではもちろん最終決戦を語る楽曲として配置しています。できるだけシンプルなカッコよさを目指そうと考えて、ピアノカバーを始めたばかりの頃に好んでいたアプローチを意識しています。ここ最近書いたピアノ譜面はやたらと左手の動きが複雑でしたので......それが悪いということは全く無いと信じていますが、必要な時にはこうやって真っすぐな姿勢になるべきだなと再認識しました。

間奏、1382小節~1384小節の5連符の部分は原曲だとおそらく3連符でギターがメロディーを鳴らしているかと思います(自信はありませんが......)。同じ形でピアノに落とし込むとどうにもテンポ感が損なわれているように感じられたので、まずはより細かく刻むことを決めました。となると素直に2倍の6連符に増やすのが普通なのかなと思いますが、「奇数の連符」という属性の持つインパクトはここだと外せないなということで5連符にしています。正直やりすぎたかなと思っており、不安定な印象を与えはしないかと不安でもありましたが「間奏が良かった」という感想をいただけたので凄くホッとしました。いやまあこの部分ではなく手前のことを言っていたのかもしれませんが......

 

『With Yours』

少なくとも自分がこれまで触れてきた藤井さんの楽曲にはなかった方向性の綺麗さを持った楽曲だと思います。キラキラした雰囲気で、かけがえのない思い出を語っているような光景を浮かばせるような、まさに「宝石」というキーワードがぴったり当てはまるような印象ですね。

所々間違っている部分はあるかもしれませんが、原曲を完コピするぐらいの気持ちで作業をしていました。僕はどの楽曲も「僕のカバー/アレンジ聞くなら100倍原曲聞いてくれ~!」というスタンスでいて、この楽曲に関しては余計に「原曲聞いてくれ!!!!!」と思っています()

 

『君とのミチシルベ ~Epilogue~』

メドレーの中で異物になってしまわないか不安で不安で仕方がなかったです。自分で満足できるクオリティにできて本当に良かった......

体験版第1弾をプレイして、タイトルBGMに『君とのミチシルベ』のインスト版が使われていることを確認してすぐに「メドレーでは最初にインスト版を使う代わりに、ED前に浸れるようなアレンジを使おう」と決めていました。『Prism Overload』を初めて聞いた時は「発想が微妙に被った~~!!」と思っていたりしましたね()

『君とのミチシルベ』の2番以降の歌詞がもの凄く響いてきたんです。ただただ冒険への期待感を語るだけでなく、挫折や苦難から目をそらさず向き合って、君と一緒なら、という流れが本当に大好きで。フルバージョンを初めて聴いた時に僕が抱いた感情をベースにして、「本編後の皆に、どうか宝石のようにきれいな未来がありますように」と願いを込めてアレンジしました。

さくレットメドレーの『雨露とビードロ』から自然に『Sacralet』へ入る流れがとても気に入っていたので、テンポと調は『With Yours』に合わせました。繋ぎは少し強引になりましたが、上手く噛み合ってくれたんじゃないかなと思います。

 

『ヘリオドールの光跡』

アコギとピアノはズルすぎます......凄く優しくて、温かくて、彼らの向かう先は幸せなんだろうなと信じることができる楽曲でしょう。逢瀬アキラさんの歌声は、まるで手紙の文字をそのまま現実に映し出したように繊細で曲調にピッタリ。心にスッと落ちてきますね。

メドレーを通して盛り上げるところではやりすぎなくらいに盛り上げてきたので、最後はここまでの旅へ静かに想いを馳せるような雰囲気で仕上げました。

終盤に出てくる左手の6連符ですが、『君とのミチシルベ ~Epilogue~』でも似たような動きを使用しています。これは僕の中では「未来の広がり」を表現する動きなんです。元々この楽曲で使用する予定はなかったのですが、「物語はここでおしまいだけれど、彼らの人生は続いていくよ」というニュアンスはこちらにも乗せるべきだと思ったので、同じネタが連続してしまうことを承知で組み込みました。

 

 

 

以上。

僕が感じたこと/考えていたことは可能な限り詰め込めたと思います。おかげでとても長くなってしまいましたが......お付き合いいただきありがとうございました。